ハグロトンボの未成熟期の過ごし方を考える
住んでいる蟹江周辺ではハグロトンボを見かけることは殆どありません。小さい頃には時々は見かけて追いかけていましたが、今では見なくなってしまいました。
しかし海津市南濃町津屋付近の津屋川周辺には、まだハグロトンボが棲息しています。多分この周辺では一番数が多いのではないかと思われるほどです。そのハグロトンボが見られるのは、雑木林の下草のところや神社の境内などで、薄暗い所が多いのです。なぜこんな薄暗い所に棲息しているのか疑問に思っています。
・神社や雑木林の草むらで見かけるハグロトンボ



また津屋川に流れ込む用水路やハリヨ公園(南濃梅林)の湧水池から津屋川に流れ込む浅い川など付近でも見かけることがあります。その場合、セキショウモが水面に出ていて明るい陽射しが入り込む明るい場所なのです。この極端とも思われる場所でハグロトンボを見かけています。
「日本のトンボ」(尾園暁 川島逸郎 二橋亮 文一総合出版)のハグロトンボには、成虫期間は6月下旬から9月上旬までとなっています。羽化したばかりの未成熟のハグロトンボは、雑木林や神社の境内などで成熟するまでの期間を過ごしているのではないかと推測していいます。その時にはメスもオスも混在して生活しているようです。そして成熟してくると、水辺に行って交尾と産卵をするようになるのではないかと思われます。
・水辺にやってきたハグロトンボ



いつも思うことにハグロトンボのオスとメスのそれぞれが成熟しているサインを出し、それを知覚できる能力がそれぞれにあるのではないかということです。私には、成熟しているか未成熟化は分かりませんが、きっと彼らにはそうした能力があるのではないかと予想しています。
ところでこの未成熟の期間の過ごし方については、シオカラトンボでもオオアオイトトンボでもアカトンボの仲間でも同じらしいのです。シオカラトンボの場合には、雑木林の林縁や土手の叢にいることが多く、それもオスのメスも混在しています。それが成熟してくると水辺近くまで行き、メスが来るのを待ち構えるようになります。
・セキショウモに産卵するハグロトンボのメス



オオアオイトトンボは7月半ば頃になると、雑木林の薄暗い叢などの茎や梅林の枝にとまっています。成熟して水辺に行くのは10月頃だと思われるので、長期間、こうした雑木林の叢で過ごしているようです。そんなに何か月もの生存期間があるのかと疑問に思っているのですが、今のところは生存し続けるとしか考えられないのです。
アカトンボの仲間でも同様で、8月初旬にはコノシメトンボは海津市森下、治水神社で見かけています。アカトンボの場合には、胸が黄色っぽいので未成熟の個体だと推測し易いのです。また南濃町津屋ではこの時期にマユタテアカネやミヤマアカネも見かけますが、これらも胸の黄色から未成熟個体だと思われます。
これらの様子から、トンボは一般に未成熟期にはある場所で過ごし、成熟してくると水辺に出てきて、交尾と産卵するのではないかと考えられるのです。ハグロトンボも同様に、雑木林の薄暗い下草周辺や神社の境内で見かけるのは、未成熟個体が成熟するまでの期間を過ごしているのではないかと思われるのです。雑木林の薄暗い下草付近で見かけるハグロトンボと、水辺の明るい場所で見かけるハグロトンボがいる理由には、そんな違いがあるのではないかと思っています。本当かなー。
(カワトンボ科 アオハダトンボ属)