ウチワヤンマの交尾態と産卵で気になったこと!
住んでいる蟹江周辺で、ヤンマといえばギンヤンマとウチワヤンマがいます。ギンヤンマのオスは田んぼや用水路などに縄張りを持ち、そこをいつも巡回しています。殆どとまらないで飛翔し続けています。それでも猛暑日には、叢や木立の木にぶら下がって暑さを凌いでいます。
・ウチワヤンマ



ウチワヤンマはヤンマという名前があるものの、サナエトンボ科でギンヤンマとは違っています。そこで習性も違っています。ウチワヤンマは、枝や杭の上で、シオカラトンボなどのように水平にとまります。また縄張りがあっても、それほど広くなく、一回りするととまっている杭などに戻ってきて、とまっていることが多く、そこはギンヤンマとは随分違います。
・ギンヤンマ



小さい頃からギンヤンマの連結産卵などを見てきました。ギンヤンマが交尾態になるのは最近になって知りましたが、植物の茎などに埋め込み産卵をします。その場合殆どの場合、オスが先導役になって、連結して水上の植物などにとまります。そこでメスが埋め込み産卵すると、他の場所に移動して産卵を繰り返します。
ここ数年前から、ウチワヤンマの交尾態が飛翔しているのを見かけました。ギンヤンマに較べると糞詰まりのような塊になっているような形で飛翔しています。かなり速くあちこち移動してから、オスとメスが離れて、メスが水面上で打水産卵します。その上空でオスが警護産卵をしています。この産卵方法は、シオカラトンボやコフキトンボなどと同じ産卵の仕方です。いつも遠くからで、詳しく産卵場面を見かけることがないので、打水産卵しているとしか分からないのです。
・初めて見かけたウチワヤンマの交尾態



数日前に初めて、飛島村三福の金魚養殖放棄池でウチワヤンマの交尾態が杭にとまっているのを見かけました。かなりじっとしていましたが、その後交尾態のまま飛び立って、あちこちと飛び回ってから、近くの養殖池の真ん中で交尾態を解き、メスは水面近くの空中でホバリングしていましたが、その後、打水産卵し出しました。すると上空にオスがいてホバリングしていました。ただメスがすぐに打水産卵すると思っていたのですが、少し間があって、打水産卵し出したのです。その辺りには藻があるような感じに見えました。
・ウチワヤンマの交尾態飛翔



「日本のトンボ」(尾園暁 川島逸郎 二橋亮 文一総合出版)のウチワヤンマには「産卵として、交尾が終わりに近づくと、交尾態のまま広く飛び回って産卵場所となる水面の浮遊物を探す。その上でオスは連結を解き、メスは単独でホバリングしながら、服端で浮遊物を間欠的に打つ。卵は糸でお互いに連なり、産卵中のメスの腹部から垂れ下がっているのが見える。」と記されています。
・ウチワヤンマの警護産卵



この記述から、ウチワヤンマのメスは池の真ん中の藻があるところに産卵したのではないかと思われます。産卵する条件があるのではないかと思われるのです。
オスがメスの産卵中、上空で警護すると言われています。他にはシオカラトンボ、ショウジョウトンボ、コフキトンボなどが同じように警護産卵をします。警護産卵は、他のオスが侵入してきてメスを横取りするのを防ぐためだと言われています。
コフキトンボもショウジョウトンボも、オスが上空で警護しながらメスが産卵していても、他のオスが侵入してきて奪い取って交尾態になり連れ去るケースが多々見られます。でもそのメスは別のオスと交尾態になっても、分かれるとまた産卵し始めます。ある特定のオスの受精卵を産卵したいとは思っていないように見えるのです。ただ産卵行動を完遂したいと考えている風情です。
ウチワヤンマの産卵風景を見ると、オスも上空でメスの産卵を警護しています。産卵が長く続くという訳ではありません。その警護の様子を見ると、他のオスの侵入を防ぐための警護というよりは、メスが産卵をやめて逃げて行かないように監視しているのではないかとさえ思えてしまうのです。少しオスが離れて油断すると、メスはすぐに飛んで行ってしまうようようなのです。
このようにオスがメスの産卵を上空で見ていることの意味が、コフキトンボやショウジョウトンボのようにメスが自発的に産卵し易い種と、オスに管理されて産卵を促されている種の違いがあるのかも知れないと思ってしまいました。
またギンヤンマと比べると、同じヤンマといわれながら、ギンヤンマの方が確実にオスの子孫を繋ぐための産卵が確保されるのに対し、ウチワヤンマの産卵は進化上では古いタイプの産卵方法かも知れないとも思ってしまいました。
(サナエトンボ科 ウチワヤンマ属)